*解説 Introduction
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ロバート・H・ソロ製作、トニー・リチャードソン監督によるオライオン映画作品『ブルースカイ』は一風変わった、
だが強い愛の絆で結ばれた夫婦の物語であり、また核実験を背景とした軍の機密にかかわるサスペンスを描いた
作品でもある。脚本を書いたラマ・ステグナーは実際に少女時代にアラバマの陸軍基地内で過ごしており、この
物語は彼女の両親をモデルに書かれている。
ステグナーの記憶にあった奔放で現実を直視できない母親の役を見事に再現してみせたジェシカ・ラングは彼女が
脚本を書く段階で念頭に浮かべていた女優だったという。そしてこの物語が実話を元にしていることに興味を覚え
出演を快諾したラングは、見事オスカーに輝く熱演で期待に応えている。
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彼女の夫にして、激しく揺れ動く妻の不安定な精神を優しく大きな愛を包み込むハンク・マーシャル少佐役には
『逃亡者』でのオスカー受賞後まさに脂ののりきっている感のあるトミー・リー・ジョーンズ。
さらに監督を務めたトニー・リチャードソンは、残念ながら本作が遺作となってしまったが、やはりかつて『トム・
ジョーンズの華麗な冒険』でアカデミー監督賞・作品賞を受賞した大ベテランであり、このオスカーに輝く3人が
それぞれの才能を余すところなくぶつけ合ってるというのが本作のポイントだろう。
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映画は1990年に準備され、アラバマ州セルマ市を中心に他にテキサス、フロリダなどで順調に撮影されたが、
編集の仕上げ段階で監督のトニー・リチャードソンが惜しまれつつ世を去ったことと製作会社の倒産騒ぎなどに
よって公開が先送りされていた。だが、その胸を打つテーマ性、サスペンス溢れるリチャードソン監督最後の演出、
そしてジェシカ・ラングを始めとするキャストの素晴らしい演技によって満を持しての開演と相成った。
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1995年6月24日発行 ブルースカイ・パンフレットより抜粋 |